2人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごらんください、わんこの王様!現在、犬と触れ合える動物園がこんなにあります!どの動物園でもふれあいコーナーは大人気!時間予約制である場所もとても多いほど!子供の頃から犬に触れて、ワンコ愛を充電している者も少なくありません!お散歩体験もできますよ!!」
「おお、これはすごい。ふむ、ドッグカフェもあるのだな?」
「その通り!ドッグカフェでは短時間ではありますが、好きな時に好きなように好きな種類のワンコをモフれるのがミソ!こちらもなかなかの人気です。ワンコをお膝にのせての読書はまさに至福の時間でございます!ワンコの人気そのものはけして下がってはいないのです!!」
「なるほど、飼わなくても触れ合える機会は多い、と」
「ですです!私も、将来は犬たちを一番愛することができる職業に就きたいと思ってますから!まあ、私のアタマでは難しいかもしれないけれど……」
実は、私が今年入った大学は獣医学部なのだ。おかげで英語以外の語学も勉強しなければならなくて結構しんどいのだが――それはそれとして、夢のために本気で頑張っているつもりではあるのである。
脳みその中身は詰まってないけれど。コワモテの教授にひーひー言ってはいるけれど。
それでも、ワンコへの愛は誰にも負けないつもりでいる。たとえ獣医師の資格が取れなくても、この大学で学んだことはきっと今後の役に立つはずなのだ。
「……なるほどのう。そなたの話はよくわかった。そうか、確かに……犬を飼う、だけが犬への愛ではないな」
ふむ、とわんこの王様は頷いて言ったのだった。
「ありがとう、参考にさせてもらおう。それでは、そなたを元の世界に帰そうぞ。今準備を……」
「あああああああちょっと待ってください王様!」
私はずささささささささ!と王様の御前で這い寄った。さながら這って動くカヤコよろしく。
「帰る前に王様と皆さまを全員!最低十五分ずつモフらせてください!寝坊してもいいのでええええええ!」
「おまえほんと歪みないな!?」
それはそれ、これはこれ。せかっくワンコの王国に来たのに、このまま帰るなんてもったいないことはしたくはないのである。
暫くの間、本能的に危険を感じた王様と、それを追いかけまわす危ない女という図が繰り広げられたのは言うまでもない。
最初のコメントを投稿しよう!