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わんこの王様と犬派の女
「癒されたい……」
その日。私はテーブルに突っ伏して嘆いていた。
「癒し、癒しがほしい……ヤクザみたいなおっさんにえんえんと調教され続けるのはもう無理、もうマヂ無理ぃ……」
「誤解招く表現やめなって」
そんな私の後頭部を、ぺじりと叩いたのは高校時代からの友人、真理だ。
「ヤクザみたいなおっさんとか言わないの!アレ一応大学教授なんだかんね?」
「ううううううううううううううううううううううう……」
ちなみにここは、大学の講義室。
私はテストがちっともできずに、べっこんべっこんにへこんでいるというわけである。大学生も、悲しいが英語の授業からはそうそう逃れられない。うちの学部もそれは同じ。必修科目は嫌でも取らざるをえないのだ――それがたとえ、ヤクザみたいな顔した怖い教授の授業であるとしても。
成績が悪いと鬼のような顔でくどくどと説教されて、どんどんSAN値が削られていくのがわかっていたとしても。
「つらい、つらいよう。私間違いなく今回のテストだけじゃ単位貰えない。きっと追加試験になるう……」
私は子供のように両手足をばたつかせて訴えた。
「現実逃避したい。でないと勉強する気にもならん。コワモテのおっさんじゃなくて、妖精のような可愛いもふもふに会いたい。もふもふに、もふもふにいいいい」
「重症だね、羽須美……」
はあ、と真理はため息をついて、私に言ったのだった。
「仕方ない。……あんたにとっておきのおまじないを教えてあげる。“わんこの王様”に出会えるおまじないってのが、ネットでちょっと話題になってんのよ」
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