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「ここ最近の地上は災害が多いな…
この村も、津波で壊滅したみたいだ」
ルステルが強制的に地上に降ろされてからかなりの月日が経った。
最初こそ無理やり門をくぐって戻ろうとしていたルステルだが、警備が厳重になった影響もあり、毎度毎度追い返されてしまっていた。
そんなことが続きだんだんと戻ることを諦め、大人しく兄からの伝令を待つことにしたのだった。
地上に降りている時のルステルは巡教者に姿を変え、各地を練り歩いている。
今回もそうして全国を巡っていたのだが、最近の様子はどうもおかしい。
目的地の村や、滞在中の街が、どんどんと災害により壊滅だったり、甚大な被害を被るようになってきた。
最初は予定外の降臨をした自分が原因かとも思ったが、人間の話を聞く限りでは全国的に至るところで災害が頻発しているという。
災害が起きるのは、自然の統治者である七大神の体調が優れなかったり、機嫌が悪いとか感情が昂りすぎるせいだ。
今までもそういうことは何度かあったが、ここまで全国的に頻発するのは初めてのこと。
天界で何かが起き始めたに違いない。
__ドンッ
空を見上げながら歩いていたせいか、すれ違いざまに男性とぶつかってしまった。
「おっと、悪いね兄ちゃん」
「いえ、こちらこそすみません。
……今のもしかして……
……あーやっぱりスリかぁ、犯罪も増えてるなぁ」
人間の負の感情はハイドラが司っている。
災害に便乗した火事場泥棒や性犯罪、殺人も増えているということは、ハイドラもまた何かが影響して感情が昂り過ぎているのかもしれない。
「にしても、またお金がなくなっちゃった……そろそろご飯食べたいのに……」
ルステルは人間の姿に変身してはいるものの、身体の作りは違うため食事を摂らなくても死にはしない。
だが地上での食事を娯楽と考えているため、各地での名物料理などを食べることを楽しみにしていたのだ。
尤も、今の状況下では営業している飲食店も少なく、金銭があったとしてもまともな食事が提供されるとは限らないが。
「まだ伝令は来てないけど、さすがにこの状況はただ事じゃない…
今帰っても怒られはしないだろうし、様子を見に行くだけだから…」
ルステルは空を見上げ、帰還を急いだ。
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