児戯のような企て

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__アハハ、アハハ…… 最下層の地下牢からは笑い声が絶えず聞こえてくる。 堕天使エニグマを地下牢に連れていった日から一ヶ月ほど経っただろうか。 ハイドラはこの間一度も地下から出てこず、ずっとエニグマと一緒にいた。 食事を持っていった天使によれば、二人はまるで幼い少年のように笑いじゃれ合い、“何か”をずっと話しているという。 “何か”というのも、二人は天使が降りてくるとそれまでの話を中断してしまい、天使が地下から出るまでずっとクスクス、ニヤニヤ、ゲラゲラと笑うだけなのだ。 天使達は二人の変わりようと異質さに怯えっぱなしで、魔界では全員が天界への帰還を嘆願し、天界では噂を聞いた天使達が魔界への配属を拒否をし始め、最初の一週間で既に嘆願書が溢れかえって手が付けられない状態になっていた。 魔界の執務室に山のように積み上がる嘆願書。 一ヶ月後、地下から出てきたハイドラは不気味な笑みを称えながらその嘆願書全てを許可し、魔界から天使達を追い出した。 その代わりに配属予定の天使を皆変更し、代わりにスラムに住む天使を皆魔界へと配属せよといった内容の書簡を天界へ送り付け、自ら天界へと赴きスラムの民をエスコートするという前代未聞の行動を起こした。
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