児戯のような企て

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「さあ皆さんこちらにどうぞ。足元に気をつけて」 胡散臭い張り付いた笑みを浮かべ、仰々しくスラムの民をエスコートするハイドラ。 何も知らされていないスラムの民たちは、不安そうに列を成し、ハイドラの誘導に従っていた。 その異質な様子を天使達はザワザワとどよめきながら遠巻きに見ている。 群衆に紛れ、プロメリアとアネモイアもそこに居た。 「何あれ…気持ち悪っ」 「気でも触れてしまったのでしょう… フフ、イイ気味ですわ」 小さな声で毒づいたはずだが、ハイドラの動きと表情が急に止まった。 そしてぐるんと振り向いたと思いきや、群衆の中からひと目でプロメイアとアネモイアを見つけ目を合わせた。 「「っ?!」」 「あぁ、プロメリア、アネモイア。久しぶり。」 張り付いた笑みを浮かべたままゆっくりと近づいてくる。 その顔に二人に虐げられて泣いていたハイドラの面影はなく、異質な雰囲気に二人は思わず後ずさりをした。 しかし後ろの群衆に阻まれ、前の群衆は近づいてくるハイドラに恐れおののき道を開けてしまったため逃げ場はなかった。 「な…なによ!なんか用でもあんの?!」 「わたくし達のことも兄様と同じ目に合わせようというの?!」 四方を群衆に囲まれ、逃げ場はない。 焦った二人からは昔のような罵詈雑言は咄嗟に出てこず、身を寄せあってただ狼狽えるばかりだ。 自分を恐れる二人の表情を見て、ハイドラはいっそう満足そうに微笑んだ。 そして硬直して動けない二人の首元に手を当て、耳元で囁いた。 「二人とも、首から上は傷つけないようにしてね… せっかく綺麗な顔してるんだし…ね?」 ゾワッ、と。 ハイドラはほんの僅かに闇の力をチラつかせ、闇が二人の首を撫でた。 「〜ッ!!!触るな、汚らわしいッ!!!」 意味のわからない発言に心臓が止まりそうになったが、ハッと我に返ったプロメリアは群衆のことも忘れ、業火を振りまいた。 しかしそれはハイドラには当たらず、彼は軽い身のこなしで既に後ろに避けていたのだった。 被害にあったのは周囲にいた群衆。 「プロメリア様、何をなさっているのです!」 熱い、熱いとのたうち回る周囲の群衆。 焦る兵士の天使達。 プロメリアが自分のしたことに顔を青くしている間に、ハイドラとスラムの民は姿を消していた。
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