児戯のような企て

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__コンコン 「ポセイラ!僕だよ、ルステル!いる?」 誰にも咎められずポセイラの部屋の前へと辿り着いたルステルはドアをノックする。 「ルステル…ルステルなのか? ……なぁ、そこにハイドラは居たりしないよな…?」 少し時間が空いてから、か細い声で返事が返ってきた。 声は弱々しく兄弟の所在をしきりに確認してくる。 「?居ないよ、僕一人!」 「本当だな…?」 意図の分からない質問に疑問を感じたが、ポセイラはルステルの言葉を信じたのかゆっくりと扉を開けた。 「久しぶり〜、って… なんかイメチェンした?」 記憶にあるポセイラは、短髪で肉付きも良く、快活で元気いっぱいな性格だったはずだ。 しかし今目の前にいるポセイラは記憶とは程遠く、髪は伸ばしっぱなしでやせ細り、扉から少し顔を出しながら必死に周囲をキョドキョドと見渡していた。 「もしかしたらハイドラがいるかもしれないだろ、早く入れ!早く!!」 「え、あ、うん…」 鬼気迫る表情で手招きされればルステルは従うしかなかった。 ルステルが部屋に入ったことを確認すると、ポセイラは勢いよく扉を閉め、厳重に鍵をかけていく。 「ポセイラ、どうしちゃったの? 会わない間に随分と……」 「ルステル、ハイドラにはもう会ったのか?」 ルステルの言葉を遮り、ポセイラが焦ったように問いかけた。 やはり、なにか変だ。 僕を二人から遠ざけようとするヘリオル兄さんも、何故かハイドラを気にするポセイラも。 「会ってないよ。なんで?」 「そうか、そうなのか、それならいいんだ、それでいいんだ…」 「ねえポセイラ教えて!僕のいない間に何があったんだよ!みんなおかしいよ!」 安心した、と呟くポセイラの肩を掴み、ルステルは普段の温厚さとは真逆の勢いでポセイラを問い詰めた。 しかし… 「ダメなんだ……ハイドラは…… ダメ、アイツに近づいちゃいけない…… お前は絶対ダメだ…… 闇が、闇が……」 ルステルの問いが聞こえているのかいないのか、ポセイラは爪を噛みながらうわ言の様にダメだ、と呟き続けるばかり。 痺れを切らしたルステルは普段は出さない大声を出した。 「〜ッ……!!ポセイラ!!しっかりしてよっ!!」 __ドンドンドンッ 「ルステル!ルステル!!! いるのか、ルステル!!!」 突如激しく叩かれる扉とヘリオルの怒声。 「ポセイラ、早く開けろ!グズグズするな!」 「あっ、あぁ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」 ヘリオルの大声で我に返ったのか、ポセイラは慌てて扉に駆け寄り、何重にもなった鍵を焦りながらも開け始めた。 最後の鍵を解錠すると同時に蹴破る勢いで扉が開かれ、怒りと焦りに包まれた表情のヘリオルが飛び込んできた。 「ルステル…ポセイラから何を聞いた?」 ワナワナと震えながら強くルステルの肩を鷲掴み、怒気の篭った静かな声で問いかける。 「な、何も…… ポセイラの様子がおかしくて、何も……」 「本当か? ……本当だな、ポセイラ?」 扉の前でガタガタ震えるポセイラにゆっくりと振り向く。 ポセイラは必死に首をブンブン振りながら同意した。 「ならいいんだ。 ……ルステル、お前は今から地上へ行け」 「え?!どうして?!今世紀の降臨はもう終わったはず…っ」 「良いから!!! 早く行くんだ!!!」 鬼気迫る迫力のヘリオルに、ルステルは萎縮してしまい硬直することしか出来ない。 「……門まで送る。こちらからの伝令があるまで帰ってくるな。」 ヘリオルは無抵抗のルステルの腕を掴み引きずるようにポセイラの部屋から去って行った。
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