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時は少し遡り、ヘリオルがプロメリアの件で呼び出された時。
ヘリオルは護衛の天使にルステルを任せたつもりで急いで現場に急行していた。
情報網が混乱しており、伝令の天使が誤って護衛の天使を呼びに行ってしまったことに気付かずに……
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「プロメリア!何をしている!」
ハイドラ達が去ったスラム街では、群衆が慌てふためき逃げ惑い、その中心ではプロメイアの炎によって燃え盛る地を消火せんと兵士の天使が奮闘していた。
しかし神の炎はいくら天界の水とはいえ簡単には消えない。
プロメイアは棒立ちのまま呆然と立ちすくみ、その横ではアネモイアが泣き崩れていた。
ヘリオルは舌打ちをし、天候を操って雨を降らせ、一面を瞬時に消火した。
「あぁ、ヘリオル様、ありがとうございます…!」
「急ぎ怪我人を宮殿へ。アトライアの下へ運べ。」
「かしこまりました!」
冷静に天使に指示をしながら、ヘリオルはズンズンとプロメリア達に近づき、胸ぐらを掴んで平手打ちをした。
「プロメイア、何を呆けている!
状況を説明しろ!
事故か故意か知らんが、神が天使を手にかけるなど…場合によっては重い処罰を下すぞ!
アネモイア、お前もだ!
泣くばかりでは何もわからな」
「ヘリオル兄……
ハイドラはダメだ……
アイツはダメだ、殺さなきゃ……
もうすでに、闇に……飲まれて……」
我に返ったプロメリアは、ヘリオルを見つめガタガタと震えながら、ダメだ、ダメだと呟き続ける。
既に闇に飲まれた…?
そんなバカな、ついこの間までいつも通りの様子で淡々と執務をこなしていたはず。
何も変わりは無かったのに、ここ数日で変わってしまっただと?
もっと深く詳細を聞きたいのに、プロメリアは要領を得ない言葉を繰り返すだけ。
苛立ちを隠せなくなり、次はアネモイアを詰問しようとした時。
「えっ、ヘリオル様が何故ここに…」
「…護衛?!お前たち何故ここにいる?!
ルステルはどうした!」
「わ、私共はルステル様はヘリオル様が見張っているはずだから早く現場へとの伝令を受け…!」
「くそっ、混乱のせいか…
ここは任せた、私はルステルの下へ行く!」
ルステルを天界で一人にさせてしまった。
非常にマズイ。
ポセイラに会いに行ってハイドラの現状を知ってしまうかも……
いや、既にこの場から消えたハイドラが、ルステルの前に姿を表すかも……
必死にハイドラに関わるもの全てから遠ざけてきたのに水の泡だ!
今は創世神に頼れないのに、天界を混乱させるわけには……
最悪の事態がいくつも頭に浮かんでは消えていく。
ヘリオルは宮殿までの道をひた走った。
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宮殿内を走り回り、ポセイラの部屋の近くまで来た時だった。
「〜ッ……!!ポセイラ!!しっかりしてよっ!!」
ルステルの大声。
なんということだ、ポセイラとの接触を許してしまった…!
急いで部屋の前に駆け寄り力強く扉を叩く。
__ドンドンドンッ
「ルステル!ルステル!!!
いるのか、ルステル!!!」
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「ヘリオル兄さんっ…!痛い、離して!自分で歩くからっ…!」
「…………」
いつもは冷静沈着で笑顔の絶えない優しいヘリオルが、見たこともない表情で怒っている。
どうして兄がこんなに怒っているのか、ルステルには検討も付かなかった。
可能性を考えるならば、ハイドラ。
ポセイラもヘリオルも、ハイドラの話題を口に出しただけで様子を変えた。
「ねえヘリオル兄さん、聞いてよ!止まって!
今何が起こってるの?どうして何も答えてくれないの?!
ハイドラはどこにいるんだよ!!」
ヘリオルは問いかけに応えることなく、ただ天の門へと黙々と進んでいく。
あっという間に門につき、抵抗するルステルを無理やり締め出すとようやく口を開いた。
「………………
ルステル、ハイドラのことは忘れるんだ。金輪際口に出すな。
もう一度言うが、こちらから伝令を出すまで絶対に帰ってくるんじゃないぞ。」
「待って、兄さ……」
静かな低い声で言い放ち、ルステルが反応する前に扉は閉められたのだった。
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