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「え……?!なに、これ……?!」
辿り着いた天の門。
その門扉には、赤黒い血痕がベッタリと染み付き、地面には首の無い天使の屍体が転がっていた。
半開きの扉の奥からも、生臭い血の香りが漂ってくる。
「いったいどうなってるの……?」
恐る恐る扉を押し開けると、想像以上の惨状が広がっていた。
そこかしこに倒れている天使達は皆血塗れで、おそらく息のある者は一人もいないだろう。
全員、首が無い。
少し奥では、真っ黒な羽根の悪魔達が天使達を殺しながら、飛び回っている。
屍体を辱めて遊んでいる者もいた。
思わず吐き気が込み上げ、その場に吐き戻してしまう。
「キャハハハハ!!!
……あー?ここいらの天使は全員殺したと思ったけど…まだ生き残りがいたか!」
物音で悪魔たちに気づかれてしまった。
驚いたルステルは咄嗟に手をかざし、聖なる光を放った。
「うぐあぁあっ!!!
あ、熱い!痛い!」
「っあ、しまった…!
ご、ごめんわざとじゃ…」
聖なる光に当てられた悪魔は、まるで全身が一瞬にして焼け爛れたような感覚に襲われた。
一方で他人を傷つけたことの無いルステルは、突然の事に焦ってしまい、思わず悪魔に駆け寄る。
「こいつ、天使じゃねえな?!
まさか光神……?!」
悪魔達はどよめき、攻撃を喰らった悪魔を見て恐れ戦いた。
神なら自分達が適う相手じゃない。
瞬時に悟った多少知恵のある悪魔は一足先にこの場から離れた。
しかし無謀にも勇敢な一部の悪魔達は意を決して、ルステルを討たんと飛びかかってきたのだった。
「光神だろうが今は一人だ!数で叩きゃぁ俺らにも勝機はある!」
「あの厄介な光さえ出させなければいい!七大神の中で一番弱いって聞いたことがあるぞ!」
「お前ら行くぞ!やっちまえ!」
猪突猛進で突き進んでくる悪魔達。
戦いたくない、でもこのままじゃやられる…!
逡巡したルステルが出した答えとは。
「悪魔さん傷つけてごめんね!ほかの仲間に手当してもらってー!」
逃げ出す、一択だった。
悪魔の言う通り、ルステルの戦闘力は神の中で一番低い。
ルステルの使命が攻撃に向いていない、というのが一番の理由だが、それ以上に人を傷つけるのを本人が嫌がっていた為だ。
剣技や武闘の訓練でも、かつてのハイドラに負けるほど弱かった。
しかし、足の速さと体力は神の中で一番だ。
その類まれなる能力で一瞬で逃げ去り、悪魔達はルステルを見失ってしまった。
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