幼き記憶

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天空の宮殿。 行き交う天使達の隙間を縫って走る小さな少年は、誰かを探すように辺りを見渡していた。 「ハイドラ、ポセイラ!やっと見つけたぁ… 今日のお勉強終わった?遊ぼうよ!」 「うわぁ?!」 「ほぎゃっ」 白金の柔らかな髪を持つ少年__ルステルは、見知った影を二つ見つけ、子犬のように飛びついた。 突然の衝撃に驚いた青髪の少年と、黒髪の少年は悲鳴をあげる。 「なんだ、ルステルかよ…驚かすなよ、ったく」 「ごめんごめん!つい嬉しくなっちゃって」 ルステルは心底幸せそうな笑みで、深い海のような青髪の少年__ポセイラに抱きつき直した。 ポセイラは鬱陶しそうにルステルを引き剥がし、横にいた少年に押し付ける。 「ねえ〜、ハイドラも僕に会えて嬉しいでしょ〜?」 「う、嬉しいけどぉ…っ!重いよルステル…!」 「それはハイドラがひょろひょろだからだよ〜ん」 続けて隣の宵闇のような黒髪の少年__ハイドラにもたれかかり、ニヤニヤと体重をかける。 「今日は何して遊ぶ?」 「俺はなんでもいいよ、ルステルが決めて」 「ぼ、ぼくもなんでもいいよ…」 「もーっ、二人とも自主性ってモノがないんだから!」 「どうせいつも最終的にルステルの案になるんだし、最初からお前のしたいことにした方がいいだろ」 「それもそっか!」 ルステルは顎に手を当てしばらくうんうんと唸ったあと、意地悪な笑みを浮かべ___ 「じゃあ追いかけっこ!ビリが今日一日一着の人の言うことを聞く! とりあえず……中庭の噴水まで!よーいドン!」 脱兎のごとく走り出した。 「あっ、ちょっ…!それはナシだろーが!」 「え、えぇ!待って二人とも…!」 続くポセイラと、足を縺れさせながら追いかけるハイドラ。 三人の笑い声が軽やかに響いた。
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