3人が本棚に入れています
本棚に追加
_____
宮殿の外の出来事など露知らず。
ポセイラはイヤイヤながらも執務を片付けるために部屋から出て移動している最中だった。
いつもより人気が少ない気がするけど、誰とも会いたくないからその方がいい。
通り道にある噴水に差し掛かった時だった。
聞き覚えのある声と、知らない声が聞こえる。
心臓が一際大きく跳ねた。
でも、聞き覚えはあるけど口調は全く違う。
別人であれ、勘違いであれと、壁から覗いてみた…
あの横顔、間違いない。
成長しているけど、面影は残っている……
_____
「ポセイラ!まさかお前から会いに来てくれるなんて、思いもしなかったぜ!」
感動の再会とでも言いたげに、両手を広げてポセイラに近づくハイドラ。
しかし、片手には闇を纏わせ、もう片手には天使の生首。
ポセイラは情けない悲鳴を上げながら後ずさった。
「ヒィ……ッ!くく、くくく来るなぁっ!!
や、やや闇を!その闇を俺に近づけるな!おおお俺に近づくなぁーっ!!!」
叫びと同時に噴水の水が意志を持って動き始め、ハイドラとエニグマを閉じ込めた。
「ッガボ、ゴボゴボッ…!」
「〜〜!!ゴボ、ゴボボッ!!」
いきなり酸素を奪われ、藻掻く二人。
ポセイラは震える足で今のうちに逃げようと立とうとする。
だが手足に上手く力が入らず、盛大に転んだ。
その拍子に水を操っていた力も不安定になり、二人は水の牢獄から解放されてしまった。
「ゲホゲホッ……おいおい、いきなり挨拶が過ぎるだろォが……
兄弟の再会にやる芸当じゃねーぜ……」
「初対面の俺にまで遠慮なくぶちかましてくれるとは…
コイツ相当肝が座ってんな、ハハハッ!」
もう一度、もう一度足止めしなきゃ…!
そう思っているのに焦りのせいでまったく集中出来ず、二人はどんどん近づいてくる。
「くるな、くるな…っ!」
「待て待てポセイラ、何も酷いことはしねェよ…
俺様だって久しぶりに会えて嬉しいんだ。
お前を傷つけてから一度も会えなかったし、その事も謝りたく」
「うぅ、う五月蝿いっ!!!
来るなって言ってるだろ!!!
うう薄汚い闇の眷属が…っおおお、お前のそばにいると闇が移る!!!
どっか行けよ!!!」
恐怖のあまり思わず感情が爆発し言葉となって溢れ出た。
そしてその言葉でハイドラの動きが止まった。
ポセイラはそれを好機だと思い、吃りながらも饒舌に言葉を紡ぐ。
「せ、せっかく助けてやろうとした俺の好意を、無駄にしやがって!
ぁあああの時すごい痛くて、苦しくて、死ぬかと思ったんだ!
ァァァアレからお前が怖くて怖くてまともに外も歩けなかった、俺の気持ちがわかるか!!
魔界に篭ってようやく出てこなくなったと思えば、ききききき急に戻ってきやがって…
帰れ!もうお前の居場所は天界にはない!!!!!」
ハァ、ハァ、ハァ、
一通り吐き出したポセイラは肩で息をしてハイドラを睨んでいる。
肌に刺さるような静けさが訪れた。
ハイドラはまだ動かない。
エニグマは、いざと言う時は自分が代わりに、と剣に手をかけた。
最初のコメントを投稿しよう!