不和の種

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時は流れ、ルステル達もだんだんと成長し、勉強の内容も座学ではなく下界へと降り立ち人々の前に降臨することが増えてきた。 ルステルは幸福の神として地上の教会へと旅立つことが多くなり、昔のように毎日遊ぶことも出来ない。 ポセイラは地上に行く回数は少ないものの、毎日海の様子を管理し大きな災害などが起きないよう気を配っていた。 ハイドラは魔界の牢獄の統治者として行き来することが多くなり、より一層周囲から忌み嫌われていた。 「お、ハイドラ!久しぶりだな!」 「ポセイラ…!久しぶり…元気そうで良かった」 二人が会うのはだいぶ久しいことだった。 ハイドラは大好きな兄弟との再会に思わず笑みが零れたが、彼の隣にいた二人の少女と目が合いまた表情を曇らせた。 「プロメリア、アネモイア…も、こんにちは…」 「話しかけないでよ、おぞましい」 「あぁ嫌だ、わたくしを見ないでくださいませ」 燃えるような赤髪の少女__プロメリアと涼やかな緑髪の少女__アネモイアは軽蔑した目でハイドラを見る。 おそらく兄妹の中でハイドラを一番嫌っているであろう二人だ。 小さい頃から三つ子の兄であるポセイラがハイドラと仲良くしていたのも気に食わず、特にプロメリアは人一倍正義感が強かったため、恐ろしい魔界と関係のあるハイドラを汚物のように扱っていたのだ。 _____ ドクン……ドクン…… _____ 「おい、やめろって…」 「うるさい、兄さんは退いてて!」 「兄様がこんな汚らわしい者と仲良しだなんて、嘆かわしいわ……」 「うぅ」 妹二人はとても気が強く、ポセイラは彼女らに今まで勝てたことが一度もない。 目の前で虐げられるハイドラを庇おうとしたものの迫力に負け縮こまってしまった。 言い返せないポセイラを横目に、プロメリアはずい、と一歩ハイドラに近づき舌打ちをした。 「なんでアンタが天界にいるわけ?ずっと魔界に篭ってればいいのに!」 「なんでって、ぼくのおうちはここ、だよ…」 「フフ、汚らわしい闇に塗れた神の分際で、神聖な天が帰る場所だなんておかしなことを」 「……ッ」 二人の少女に詰め寄られ、思わず後ずさる。 _____ ドクン……ドクン…… ドクン……ドクン…… _____ (心がざわつく……苦しい……) 目が回る、鼓動が痛い、体の底から何かが這い出そうな… そんな感覚が全身を覆い、下を向いたまま動けない。 (なんで、こんな、ぼくばっかり) 視界が揺らぎ、目の前に居る少女がボヤける。 自分に罵詈雑言を浴びせるヒトガタが兄弟だとか神だとか、もうどうでもいいんじゃないか? このまま‪‪コロして黙らせてしまえば…… ふつふつと沸いてくる知らない感情に心がどんどん曇り、前後不覚になっていく。 (うるさい、うるさい、うるさい) もはや立っているのか浮いているのかわからない感覚に包まれ、体は言うことを聞かない。 無意識に腕が動き、その手は少女の首を掴むハズだった。
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