♯5

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 そういえば、日付を言ってなかったっけ。  ちなみに、この事件が起こったのは、2021年7月23日月曜日、夏休み初日のこと。  なんで夏休みなのに学校に来てるのかといえば、そこは田舎の悲しさ。  家に居ても退屈だからである。   もちろん部活目的の子も多い。  でも、私と翔ちゃんは帰宅部なので、図書室が目当てだった。  休みが始まる前、ふたりで決めたのである。  夏休み中に、図書室の本を全部読んでしまおうと。  ここまで読んできて、翔ちゃんのこと、変なやつ、と思った人も多いかもしれない。  だから、彼女の名誉のためにひとつ言っておくと、翔ちゃんは本を読むのがびっくりするほど速い。  私が1冊読み終える頃には、3冊は読破してしまっているのが常なのだ。  しかも、お堅い自然科学系とか社会科学系とか、そんなのを好んで読むところがまた変わっている。  おそらく、と思う。  彼女の方が、私よりずっと脳細胞の数が多いのだ。  5分後。  私たちは犬の死骸を取り囲み、めいめい勝手な感想を述べ合っていた。  犬はバットで頭を潰されて瀕死の状態で、横倒しになって四肢をぴくぴく痙攣させている。 「どこから来たんだろ」 「首輪してるから、飼い犬なんだよな」 「頭割れて、脳味噌半分出てるんですけど」 「だよな。狂犬病より、矢守のほうが怖かったりして」 「けどさ、あの、脳味噌に絡まってるの、何だと思う? ソーメンみたいに見えるけど」  男子のひとりが指さした。  そう。  それは私もさっきから気になっていた。  犬の頭は頭蓋が陥没して、割れ目から灰色の脳味噌がはみ出ているのだが、その表面にうねうねと回虫みたいな白い生き物がいっぱいたかっていて、脳に小さな穴を開けてしきりに出たり入ったりしているのだ。 「寄生虫、みたいだね」  犬の傍らにしゃがみ込んで、翔ちゃんが言った。 「この子、これのせいでおかしくなったのかも」 「よせよ、翔子。触るなよ」  地面から棒切れを拾い上げた翔ちゃんに向かって、深瀬君が心配そうに声をかけた。 「保健所に引き取ってもらおうぜ。こいつ、何か病気持ってるかもしれないし」
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