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俺がテーブルの上に出したものを見ると、奏人さんは一瞬沈黙して、おもむろに言った。
「……きみはそういう趣味があったのかい?」
「あの、『今まで気がつかなくて悪かった』みたいな顔で言わないでくれる?そうじゃなくって。職場の後輩にもらったんだよ」
「……コレを?」
って眉寄せる気持ちは分かる。
まだパッケージに入ったままのそれは女性物のコスプレセットで。
内容は、赤いリボンのついた黒の猫耳に、下着としてはどう見ても用をなさなそうな赤の紐ビキニ上下と、Tバックっぽい下にはご丁寧に黒の尻尾つき。
「だから、昨日の休憩中に――――」
「匠海さんの彼女さんって、コスプレとか平気な人っすか?」
休憩室で後輩から言われて、コーヒー吹きそうになった。
「……は?」
「いや、実はですね」
と後輩は手に持っていた紙袋を差し出す。
「ハロウィンに着てくんないかなと思って、ネットで買ったんすよ。そしたら彼女にキモいの一言で却下されて」
「ああ……」
「そんで、匠海さんの彼女さん年上って言ってたし、こういうのも理解あるかなーと思って。良かったらもらってくれないすか?ただ捨てるのももったいないし」
「リサイクルショップとかに出せば?」
「いや、こんなの持ってくの恥ずいっすよ」
去年の夏、奏人さんが出張行ってる時に、話の流れでうっかり付き合ってる相手が居ると喋ってしまった後輩だ。
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