第六章「新たなる脅威」

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 赤い鮮血を辺りに飛び散らせた三人の遺体が地面に横たわる。罪のない人を死に至らしめた現実に茜の悔やみ、表情を歪ませていた。 「こんなことをして……何で平気でいられるのよっ!!  罪のない人を利用してまで……こんな酷いことをするなんてっ!」  怒りを露わにし、大罪を犯した謎の女性に鋭い視線を向ける茜。だが、戦いはまだ終わっていない。非情にも、死者を弔う間もなく次の段階に事態は動き出そうとしていた。 「可愛い子を見ると試したくなるでしょう?  さぁ、そろそろ遊びの時間は終わりにしましょう。  貴方達の本気を存分に発揮して、私を楽しませてちょうだいっ!!」  風が止まり、キラキラと輝く夜の湖をバックに、妖艶な眼差しを向ける人間には見えない謎の女性は左腕を横にまっすぐ伸ばす。すると肩に乗ったフクロウが飛び立ち、死者の倒れる茜たちの目の前に降り立った。  ドクンと緊張が高まる気配がフクロウから放たれると、突然大きな風が吹き荒れた。  強い風に襲われ、何とか足を踏ん張り、飛ばされないようにする茜たち。  さらにフクロウを中心として白い靄がかかり、何か異変が始まった。  不敵な笑みを浮かべる謎の女性、風が止まり、白い靄が消えるとそこには先ほどのフクロウが半鳥半人の化け物へと姿を変えていた。 「茜っ!! 気を付けて、今までの魔物と比べ物にならない霊力だよっ!」  麻里江が危険を察知して叫んだ。  ここで引くわけにはいかないと、強い意志で茜は再び不可視の剣を構えた。 「力が湧き上がってくる……覚悟は出来ているのか? 肉片になっても知らんぞ」  半鳥半人となった化け物はぎらついた瞳で威嚇するように茜を睨みつけた。  私は車のエンジンを掛け、アクセルを踏もうとするが異常な光景に足が止まり、ジッとスマホの画面を見つめて視線を放せなかった。 「あの牙を生やした変な格好の女といい……やはりこれは、魔法使いじゃない……」  異形の化け物の姿に圧倒されてしまうが、懸命に私は思考を働かせた。  ゴーストの研究をしていた中で見た資料の中にあった上位種の存在。  その中でも他の街で猛威を振るっていた人間並みの知能を持ち、魔法使い以上の魔力を駆使する危険なゴーストがいた。  それは、神話の世界から召喚され、具現化した悪霊であり、その名をリリスと呼んでいた。  リリスはさらに使い魔として魔獣と呼ぶに値するこうした化け物の召喚までしてきたという……。  私の情報が正しいものであるなら、リリスがこの街に……もっとも危険なゴーストがこの街に舞い降りてきてしまったということになる。  手が汗で滲む、私は撤退を指示するべきなのかもしれない。  だが、どうしていいか分からない。  本当にこの状況下で逃げることなどできるのだろうか? 「迷ってなんていられないわね……」  最悪の事態を前に、私は現地に向かう決意を固め、力強くアクセルを踏んだ。
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