1:黒色

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次の日、すぐに履歴書を送り就職試験用の参考書を買い、途中でケーキ屋に寄ってケーキと焼き菓子の詰め合わせを購入すると、夜に真保さんの自宅へ届けた。 真保さんは身長が170センチぐらいありモデル体型で、小顔にはっきりした目鼻立ちとベリーショートが合わさり大人の女性のカッコよさがあった。 タイトでカジュアルな服装が似合い、男性だけじゃなく女性からもモテそうなルックス。さばさばとした性格も話していて気持ちがいい。 身長が155センチしかなく体重を気にしてばかりの私とは正反対。 彼女はケーキを受け取り「ありがとう。甘いもの大好きだから遠慮せずに頂くね。伊都ちゃん、最初に言っておくけど、筆記試験すごく難しいからひたすら勉強して」真っ直ぐな視線を向けられ、私も同じ目で返しながら「はいっ」と気合いを入れて答えた。 「まずは書類審査だけど、受かることを見越して勉強しなよ。書類の結果が来てから始めても間に合わないから」 「はい。軍師、承知しました」 「よしよし、その意気じゃ。わからないところがあったら付箋をつけてまとめて持ってきて。教えるよ」 「ありがとうございます。でもどうしてそこまでしてくれるんですか?」 「私ね、バカみたいな子が好きなの」 「……バカ?」 「ごめん、言葉足らずだった。バカみたいな正直な人間が好きなの。単細胞というか、単純というか、不器用というか」 「……すっごい言い様ですね。当たってるから言い返せませんが」 「言いすぎた。でもさ、織田課長が気になってるんでしょ?伊都ちゃんは隠してるつもりかもしれないけど、目がギンギンに物語ってるわよ」 心の中を隙間無く読まれていて、言葉に詰まると共に顔が熱くなった。 「ご名答でしょ?そういえばその織田課長なんだけど『お礼も挨拶もいらないと伝えておけ』だって。残念ね、会えるチャンスだったのに」 まさに、お礼の挨拶でもう一度会えると期待していたので一気に落ち込む。真保さんは「やっぱり単純。分かりやすすぎ」笑う。 「……だって」 「織田課長は自分たちが作った薬であなたを危険にさらしたから『責任を取ったまでだ』と言ってたわ。だから会うのは無理だろうね。会いたいなら試験に受かるしかない」 それを聞いて胸の炎に燃料が足され火力を強くする。 「じゃ、帰ります。早速勉強しなきゃ」 「おう、がんばれ単細胞ちゃん」 真保さんは勢いよく私の背中を叩いて送り出した。
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