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「そろそろ限界かな。これ以上酔わせたら危ないし。マスター、お会計を」
私は急激な眠気に襲われ、足元がおぼつかない。
BARを出るといつも苦痛にさえ感じる寒さが気持ちよかった。
荒木さんは「さっきタクシーを呼ぼうと思って電話したけど新年会が多いらしくて1時間待ちだってさ」苦笑いを浮かべる。
「1時間、結構ありますね……」
朦朧とした意識で倒れそうになると荒木さんが肩を抱き支えてくれた。
「ちょっと酔いを覚ましたほうがいいな。寒いけど近くの公園で酔いを落ち着かせないか?」
「……はい。そうしたいです。巻き込んじゃってごめんなさい」
「全然いいよ。俺、明日は休みだし彼女もいないから暇なんだ」
支えられながら5分ほど歩いた場所に公園があり、街灯で照らされる周囲に人影は無かった。
こんなに酔っ払った姿を荒木さん以外には見られたくなかったのでほっとする。
寒さは相変わらずだったが、火照った体はいっこうに冷えない。
近くの自販機から彼は水を買い飲ませてくれた。
「桜井さん、大丈夫?」
「ごめんなさい。こんなに酔っ払ったのは初めてで」
「無理はしないでいいから。すぐ近くにトイレがあるし、行こうか。少し吐いたら楽になるはずだよ」
荒木さんは私に肩を貸して、辺りより少し明るいトイレへゆっくりと進むと「君ひとりじゃ危ない。急性アルコール中毒になることだってあるし、そうなれば病院に連れて行くから側にいるよ。ほら、中へ入りな」そう言って多目的トイレへ一緒に入る。
カチャリ
無音の中、鍵をかける音だけがトイレ中へ反響した。
「……荒木さん、恥ずかしいしこれ以上ご迷惑をかけても申し訳ないので、トイレの外で待って頂けると……」
体が全くいうことをきかず、今にも崩れそうになる。
荒木さんは笑いながら「気にしなくていいよ。だって俺が出てしまったら、金も苦労も水の泡だろ。さっき恩を返すって言ってくれたから、これから返してもらうだけだよ。安心しな。明日には全部忘れてるからさ」私の二の腕を強く握り、フタがしまった便座へ無理やり座らせられた。
「……え、どういう意味ですか?」
遠のく意識に抵抗し、自分が置かれた状況を把握しようとしたが、揺らぐ三半規管がそれを邪魔する。
「無理もないよ。まあ、今までのやつらと比べると、よく意識をたもっているほうだ。つまり、こういうことだよ」
荒木さんはスーツのズボンを下ろし、下半身をあらわにした。あれはこれ以上にないほど膨張し「黙って口を開けろ。暴れたり噛んだりしたら、後悔することになるぞ」見下ろされる目は粘りがあるヘドロのような色をしていた。
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