この男、完璧。ただし……

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私の友人はイチくんだけ。 両親は他界して、親戚とも疎遠だ。 幼い頃から友達がろくにいたことがない。今でも職場の人が気にかけて連絡をくれるかぐらいだ。それまでに息絶えていたら、管理人さんに発見されて終わり。 というところまで想像した。だから、イチくんが来てくれて面倒ではあるけれど、ほっとしたのも事実。 「そうだね」 目を瞑って答えると、一拍沈黙があった。薄目を開いて彼を見たら、目を丸くして私を見つめていた。 「心身弱っていると人は素直になるって本当なんだね」 それから、こんな無神経なことを言い出す。私が、病人だということを忘れているのか。 「心身弱ったことないの?」 「うーん」 首を捻る仕草すらわざとらしい。この男に一般人の悩みなんて理解できないのだろうことはわかっていたからもう諦めがついている。 それでも、私の唯一の友人。何のメリットもないのにちっぽけな私になぜか世話を焼く希有な人に、心のどこかで助けられていた。 「ありがとう。来てくれて」 「別にいいよ」 「なんか……思ったよりも心細かったみたい」 「まぁ金の振り込みがなかったからさ。何かあったのかと思って」
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