第一章 トルメル建国記念祭

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 逃げ惑う人々をどかしどかし、思いっ切り走った。  白い腐敗が建造物の隙間から漂ってくる。  その白い腐敗の発生源は、黒いボロボロの衣服を着た羽つきの二本足で立つ。獣の大軍だった。獣は白い腐敗を吐き出しながら、同時に多くの人々を牙や爪でも犠牲にしていた。 その獣は、北の方から大量に進軍してきていた。    ぼくはそれらを無視して、城下町の脇道を突っ切る。  しばらくすると、トルメル城の外壁が見えてきた。  正門へと回った。  ぶすぶすと白い煙を発し、正門や外壁が腐り落ちている。だけど、突き進む。 「コーリアさーーーん!! ライラックさんーーー!! ハアッ! ハアッ!」  ぼくは、ありったけの声を振り絞って、叫んで探し回った。  一目散に走っては、目指すは、ぼくの寝床だと自分に言い聞かせた。そして、ライラック家の客間だ。    白い腐敗を気にも留めずに、広間を抜け、階段を上がる。  手足に激痛が起き、腐り落ちていく錯覚を覚えるが、二階でコーリアとライラックを探した。  ふと、知らないドアが半開きなことに気が付いた。  ぼくは、恐る恐る中を覗いてみると……。  う?!  卒倒しそうになった。  中の様子に激しい吐き気を覚える。    それ以来、ぼくは踵を返して、このトルメル城の祭壇へと向かった。    もう、この世では……。  コーリアにも、ライラックにも会えない……。  走りながら、自然と涙が出てきた。  ぼくは、当てずっぽうで、広大なトルメル城を走り回り、祭壇のありそうな地下へと続く扉を開けた。    そこに、祭壇はあった。
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