第二輪 黒髪の男

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困ったようにせつなを見下ろす無精髭の男。 「一応、商品だ。顔に傷をつけたら、あとで楼主にうるさく言われるぞ」 「わーってるよ、そんくらい」 「見世の名前を吐けば許してやれ。これに懲りたら、二度と同じことはする気にならんだろう」 手間賃だろうか、見張り役の男から無精髭の男になにかが手渡される。 「はいよ。たしかに」 無精髭の男は受け取ったものを懐に入れると、チラリとせつなに目を配った。 「オレだってべつにこんな仕事、好きでやってるわけじゃないんだから悪く思うなよ」 そうつぶやく無精髭の男だが、頬がゆるむその顔はとても本心で言っているとは思えない。 どこか、楽しんでいるようにも見える。 「それじゃあ、こっちにきてもらおうか」 「…いや!離してっ…!」 嫌がるせつなの襟元をつかむと、無精髭の男は水瓶の前までせつなを引きずる。
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