お化けナックル

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お化けナックル

「えェッなんだよ」  捕手(キャッチャー)の星ヒカルは憮然とした顔で若王子を見上げた。 「ちゃんとチェックしてくれ。球審(アンパイア)。どう考えてもあんな分身するボールなんておかしいだろう」  だが若王子もきちんとボールを確認してもらわないと納得出来ない。 「タイム、タイム。おかしいだろう。その(ボール)は!」  すぐさまジャガーズベンチからも監督らが飛び出して球審(アンパイア)にクレームをつけた。  球場内もザワザワと騒然だ。  すぐにオーロラビジョンに今の投球のスローモーションが流れた。 「おおォッ」  ボールが分身する様子が映ると観衆もどよめいた。 「なんだよ。そんなに疑うならいくらでも調べろよ。ほらァ」  キャッチャーの星ヒカルはミットにあるボールを球審(アンパイア)に差し出した。 「ううゥン」  対戦相手のジャガーズの監督らも覗き込むようにボールを調べた。しかし球審らがいくら調べても(ボール)に仕掛けなどない。  バッターの若王子もボールを手に取って確かめた。 「どうだ。これがビーナスの新魔球お化け(ゴースト)ナックルだ!」  キャッチャーの星ヒカルは堂々と胸を張った。不正などするはずがないと言った面構(ツラがま)えだ。 「ぬうゥッお化け(ゴースト)ナックル?」  若王子も眉をひそめた。  結局、(ボール)に異常は見つけられず、新しい球(ニューボール)で試合が再開された。 『二死(ツーアウト)満塁。若き天才バッター若王子もツーストライクと追い込まれた。両軍の歓声が入り乱れた』  マウンドのビーナスは、また逆にセットポジションを取った。
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