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アゲンスト
バッターの若王子は鮮やかに靡くビーナスの金髪を見つめ笑みを浮かべた。
「フフゥン、なるほど、ドームの特性を活かして送風にし、向かい風にしているのか」
納得したようにうなずいた。
「……」
捕手の星ヒカルは横目で打者を睨んだ。
向かい風は本格派の投手には球速が遅くなるため不利だが、変化球投手には有利に働く。
特に落ちるフォークボールやナックルを多投するピッチャーには有利でバッターの手元で急角度で落ちたり変化する。
中でも千葉マリンスタジアムは投手の正面から浜風が吹き変化球を投げる投手には有利だ。特にフォークは落差が大きく三振の山を築いていた。令和の怪物、佐々木朗希もその一人だろう。
ナックルも原理は同じだ。アゲンストの風に向かって投げると異様な変化をもたらす。
フェニックスドームではバックネット裏から加圧送風機を利用して内気圧を上げ膨張させていた。その特性を活かした魔球なのだろう。
『さァ、ビーナスも新魔球で三球勝負でしょうか?』
『そうですね。ナックルはコントロールがままならないですから。カウントを悪くすると押し出しも有り得ますしね。ここは三球勝負でしょう』
『なるほど。ビーナスは謎の分身魔球お化けナックルで三振に切って落とすか。それともプリンス若王子が返り討ちにするか。注目の第三球です』
またビーナスは逆向きにセットポジションを取っていた。
「ワァーーーッ」
両軍応援団の歓声が響いた。
右脚を上げ、左足を軸にスピンしながらアンダースローでボールを放った。
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