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新魔球ゴーストナックル
ゆっくりと華麗なアンダースローから投球練習を始めた。確かにキレイなフォームだがプロ野球の投手としては球威が物足りない。それでも低めにコントロールされ見事という他はない。続いてナックルボールの投球練習だ。
「ウッオォーーッ」
両軍の歓声が鳴り止まない。
『ナックルボーラーはメジャーリーグでも絶滅危惧と言われています。中でもR.A.ディッキーは三十八歳の時、二十勝しメジャー投手最高峰のサイ・ヤング賞を獲得しました。なにしろディッキーはそれまでメジャーとマイナーを行ったり来たりで、鳴かず飛ばずのピッチャーでしたが三十八歳の時、ナックルを引っさげ一気にブレイクしました』
『ええ、ナックルは二十世紀、最後の魔球と呼ばれてますからね。元ヤンキースのゴジラ松井も元レッドソックスのウェイクフィールドのナックルボールには形無しでしたから』
『ハイ、松井もナックルを苦手にしていました。しかしあまりにもボールが急激に変化するので相手チームからはスピットボールではないかと疑われたほどです』
『そう、ツバや整髪料を球に塗ったり、隠しておいたヤスリでボールを傷つけたりしてね』
『ええ、そうすると球が指に引っかかって予期せぬ変化をするらしいですから。もちろんスピットボールは違反投球です』
『ええ、ナックルは、それほどスゴい変化球なんですね』
『なにしろ投げた本人さえどう変化するか、わからないと言う魔球ですからね。ナックルは!』
『ただランナーがいると、ボールが遅いので盗塁がしやすく、しかも捕手が捕りづらくて、やたらと捕逸が多いと言うのが難点ですね』
『そうです。二死満塁ですから。捕手が後逸すれば三塁走者が帰り、すぐさま同点です』
『しかもナックル姫も新魔球を編み出したらしいからね』
『ハイッ新魔球、その名もゴーストナックルです』
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