新魔球ゴーストナックル

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新魔球ゴーストナックル

「フフゥン」  打った若王子は余裕の笑みを浮かべ、バットの感触を確かめていた。 「ふぅッ」ビーナスはホッとひと息ついた。  手の甲で頬を伝う汗を拭った。 『さすが天才若王子(プリンス)です。オープン戦で見たナックルを完全にバットに(とら)えました』 『ええェ、今のナックルを完璧に打たれてはビーナスには投げるボールがないでしょう』 「おい、ビーナス」  キャッチャーの星ヒカルは大げさにジェスチャーをし緊張をほぐそうとした。 「くゥ」ビーナスは睨んだ。 「思いっきり投げろよ。絶対に受けてやるから」  さらに捕手の星ヒカルは要求した。 『さァ、ナックル姫。絶体絶命のピンチだ。ここで新魔球ゴーストナックルを出すか?』 「フフゥン、おいヒカル」  バッターの若王子はキャッチャーの星ヒカルに話しかけた。 「なんだよ。若王子(プリンス)?」 「ゴーストナックルなんてマジであるのか」 「はァ、そんなの知るか。あったからって教えられるか。企業秘密だよ」  星ヒカルは、ふて腐れたように応えた。 「キミたち、私語は慎むように」  球審が若王子と星に注意した。 「ハイ、ハイ」  天才バッター若王子聖矢は嬉しそうに笑みを浮かべ愉しんでいるみたいだ。  マウンドのビーナスはロージンバッグを軽く放り投げ、ポンポンと(もてあそ)んでいた。  白いロージンが風に(なび)いた。向かい風だ。 「よし。いくぞ。しっかり取れよ。ポチ」  ビーナスはロージンバッグをマウンドへ放り投げ、セットポジションについた。  
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