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「一人で帰らせるわけないやんかー。途中まで方角同じやねんし、ちょっとぐらい寄り道してもかまへんで。それに、集団下校かもしれへんやん」
すみちゃんの予想通り集団下校に決まり、不審者情報のプリントをもらった。白いコートの女性が目撃されているらしい。最近ちょっと涼しくなってきたから、上着を羽織っている人もいれば半袖の人もいて、服装はまちまちな感じ。別にコートの人だからっておかしくはない。
日の落ちかけた帰り道。集団だったけど、田んぼをいくつも通過したころには、クラスのみんなとさよならした。今はすみちゃんともう一人、幼馴染の宇江須レインだけ残っている。家が近い者同士残っちゃうから集団下校なんて意味ないと思うんだけどなー。家もけっこうあるから、不審者が出ても、どこかに駆け込めばいいだけだし。こども110番の家もたくさんあるよ? この辺だけだけど。
レインは前髪を長く伸ばして自称イケメンを気取っている。本人いわく、髪で前が見えないのがイケメンなのだとか。ユーチューブで見るイケメンとか顔出てない人多いもんね。あと、マスクで隠したり。でも、普通は自分でイケメンなんて言わないから。レインはそこを勘違いしている。お調子者だけど、いつもなんでかクラスの隅っこにいる。根は明るいのにね。
「ほんとにあったのかよ白いワゴン」
レインがすみちゃんに車をワゴンだと断言して聞いた。私に聞かないのは、まあ、私が知るわけないと思ってるんだろうなぁ。
まあ、レインは確信したことしか言わないからな。だらしなく見えてクラスの隅にいるのに先生の話は意外によく聞いてて成績もいい。だけど、群れたがらない。だからって大人しい訳でもない。理科の実験とかは先生の説明より先に一人で実験しちゃったりして先生を怒らせてたしね。
「ワゴンやなんて一言も言ってへんわ。なんでレインはそう思うんや」
「死体を運べるから」
「もう、二人ともやめてよ。私の家の隣なんだよ。そんなにびびらせたいの?」
「そりゃ、ロエリ。お前がビビリだから」
ええええええ。
「誰だって怖いでしょ? お化けだって怖いもん。殺人なんか近くで起きたら怖いよ」
「ロエリちゃん。そんでうち、思うてんけど」
前を行くすみちゃんが、ふと夕暮れで伸びた私たちの影を踏んで立ち止まった。影踏みされると呪われるとか死ぬって聞いたことがある。すみちゃんの表情が暗くなって、睨んでいるように見えたから余計に。無言だし。怖い怖い怖い!
「ひぃっ。すみちゃん、キレてるの?」
「キレてへんわ。いい? ロエリちゃん。まじめに聞いてよ? うち……犯人は口裂け女やと思うねん」
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