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 すみちゃん、唐突過ぎない? 「どういうこと? ね、ねえ。すみちゃん。まじめに言ってる?」 「一つ確かなのは、トイレの花子さんじゃないってことやわ」 「それは分かるけど。学校じゃないし」  花子さんでも出られたら怖いけどね。うちの学校は三階のトイレに出るって噂。昼間や夕方は出ないらしいから、一体誰が目撃したんだろうね? 見た人がいないのに噂が流れるのって不思議。 「バカじゃね?」  ほら、レインに鼻で笑われてるよ。特に、私。何で私!? 「ロエリ、何まともに聞いてんの?」 「げっ。だ、だって怖いじゃん。口裂け女がほんとにいたら、怖いじゃん!」 「レインが笑うのはしゃーない思うんやけど。目撃情報の白いコートの女性って口裂け女の特徴と一緒なんよ」 「そうなんだ。口裂け女ってそういえば、赤い服じゃないかな? お化けって花子さんもそうだけど赤い服好きだよね」  すみちゃんは首を振る。 「口裂け女はな、赤いトレンチコートが有名やねんけど、ほかにも色んな色の服を着んねん。それに、プリントに書いてへんけど、この不審者は白のハイヒールも履いてる思うわ」  レインはあからさまに声を出して笑う。 「そりゃ推測だろ? まあ服装は統一した方がいいだろうけどな」 「うち、先生にニュースのこと聞いてみてんよ。そしたらな、その不審者はマスクもしてたって」 「そりゃそうだろ。今、コロナなんだから」  私たちもみんなしてるしね。コロナ禍でマスクしてない人の方が怖いって。 「でもさ、どうして先生はマスクのこと知ってるの。すみちゃん」 「先生はネットの掲示板見てんねんて」  あー、担任の先生じゃなくて美術部の先生に聞いたんだ。あの先生、めっちゃ変わってるからなぁ。 「ま、ロエリに何かあったら美術部行くわ」  美術部の顧問教師は、大のオカルト好きで有名。学校の先生じゃなくて部活のために来校する外部の先生、いわゆる非常勤講師だ。  私の家が見えて来た。田んぼと家が交互に現れるような道に、どかっと松の木が植わった大きな屋敷が私の家。みんな、「屋敷」って呼ぶけど大したことない。玄関から門扉まで数メートル距離があって、トラック一台が止められるような庭があるだけ。松の木は枯れかかった太いのが一本あるだけ。外塀は今の建築基準法じゃ引っかかるんじゃないかってぐらい、私の背丈より高い。南向きに門がある私の家まで道は一直線に伸びている。私の家から見て右、東向きに立っている白い家が空き家。その前に道を塞ぐように大型トラックが止まっている。 「ねえ、白い車ってこれのことじゃないよね?」
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