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 車一台しか通れない細い道に停めちゃって! ムカついて隣の家を見ると灯りが点いている。部屋の中から大きなものを運んでいるような音がする。 「まさか、隣に誰か住むの?」 「嘘やん。白い車なくなってるやん」  すみちゃんトラックの脇を抜ける。引っ越し業者のトラックっぽいけれど、業者名は書かれていない。個人でこの大きさのトラックって借りれるのかなぁ? 大人なら簡単なのかも。  私もすみちゃんの後に続く。ここ何年も誰も住まなかった大きな白い家。私の家がお屋敷だとすると、こっちは同じ大きさでも、近代的。セキスイハイムっぽい! ただ、庭には松の木があって誰も庭の手入れをしないから、雑草のセイタカアワダチソウで埋まっている。私の家がおじいちゃんおばあちゃんの家っぽいのに、こっちのセキスイハイムっぽい家の方が色が剥げてて古臭く感じる不思議。 「誰が住むんだろう。こんなに大きい家に」  大家族じゃないと部屋が余りそう。  庭の奥から引っ越し業者らしき人が引き上げて行った。業者かな? 黒づくめで、どこにも引っ越しの文字が書かれていない。個人で仲のいい恰幅の言いお兄ちゃんを雇った? 「よかったじゃん。隣に人が住んでくれたら不審者もロエリを狙いにくい」 「なんで私が狙われることになってるのよ」  レインはニヤニヤしている。 「うーん。金持ちそうだから」 「ちょ、家はでかくても何にもないんだから。土地もどんどん安くなってるし」 「んー、じゃあ、お前が美味しそうだから」 「なんでそうなるのよ! わ、私太ってなんかないよ」  待ちーやとすみちゃんが割って入る。 「ロエリちゃん、レインは可愛いって言いたいんや」 「ちょ、余計なこと言うな!」  レインが慌てふためく。なんだ、ただの照れ屋か。帰ったらご飯前に体重測っとこう。 「まあ、人が住んでくれるなら安心かな。ここまで二人ともありがとう」 「おう」 「ちょっと待ってえや」  すみちゃんが私の手をつかむ。じとっと湿っている。緊張してるのかな。  すみちゃんの目線の先、私の家だ。門扉で誰かが私のお母さんと話し込んでいる。お母さんは「こんなに頂いていいんですか?」と、その女性にお礼を言っている。  その女性の髪は腰まで長いストレートヘアー。更に目立つ赤のトレンチコート。同色のハイヒール。 「今後、またお会いすることもあると思いますわ。荷物は全部部屋に運び込んでもらったんですけどね。白い家は汚れが目立ちますから。内装も模様替えで忙しくなりますので、しばらくは業者の出入りが増えると思います。だから、今みたいにトラックが道を塞ぐなんてことが続いたらごめんなさいね」  お母さんは何度も立ち話はなんですからと、中へ案内しようとしていたみたい。  話し終えたその女は私たちにマスク姿で笑いかける。 「こんばんは。あら、あなたここのお嬢さん? ちょうどよかったわ。お母さんにお会いしてね。隣に引っ越ししてきたの。曽音(そね)()()(あん)よ。よろしくね」 「あ、はい」  握手した方がいいのかなと思って手を出すと、私を遮ってすみちゃんが握手した。 「よろしくお願いします」  その女の人はいたって普通の女性だった。にっこり目元をほころばせると涙袋がはっきりと浮かび上がる。柳のようにきれいな眉。マスクを押し上げる高い鼻。外人さんみたいな美人。
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