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今から10年前
とある裕福な侯爵邸に、隣国の賊が押し入った。
賊は当時5歳になる幼い娘を攫った。
金品を目的とする誘拐であった。
侯爵家の娘は稀に見る愛らしさで、国の王太子の婚約者候補としても名を挙げていた。
その容姿が幸いしたのか、娘は傷ひとつなく健康な状態で助け出された。
賊は、保険として娘を売る算段も立てていたのだ。
侯爵は必ず娘を救い出すと私財を投げ打った。
賊からの金品の要求に分割で応えつつ、自警団と共に賊の本拠地を突き止めた。
侯爵が娘との再会を喜ぶも、それは束の間。
救出までに長く時間がかかり過ぎた。
娘の心には深い傷が刻まれていた。
そして、侯爵が犯人捜索に躍起になっている間
侯爵夫人も心労が祟り、床に伏せってしまったのだ。
この一連の出来事は、侯爵家に暗い影を落とした。
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