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「終わったんだよな、これで……」
ロボリクスは、好敵手の根城だった物を見つめた。その眼差しは、どこか寂しげである。
「オレは、聖剣さえあれば勝てると思ってた。先祖から受け継いだ技もあるし、必ず打ち倒せると信じていた」
言葉に応じる声は無い。ただ、風の吹く音が聞こえるばかりだ。
「でも違った。オレは本質を見ていなかった。生まれ育ちや聖剣なんて関係ない。目的達成の為に行動し、ひたむきに努力し続ける事。日々鍛錬に励む事。それこそが大切だと、お前らに教えられたよ」
ロボリクスは、折れた聖剣を逆手に持ち、掲げた。そして勢いよく地面に突き立てた。それはとこか、墓標のようにも見える。
「聖剣はくれてやる。オレ達にはもう必要のない物だ」
そこでロボリクスが踵を返すと、帰路についた。たった3人だけで荒野を行くという、ささやかに過ぎた凱旋式である。
「ようやく旅が終わりますね。これで街の皆も見直してくれると良いんですが」
「大丈夫だろ。大手柄を引っ提げて戻るんだから」
ロボリクスは空を見上げた。清々しい、透明な空は、晴れやかな心の内を映したかのようだ。大いなる使命を果たしたのだ。そう思うと、胸に熱いものが込み上げてきた。
しかし安堵するには早すぎる。問題の全てが解決した訳ではないのだ。
「ところで勇者さん。忘れてませんよね? お代を払って貰いますから利子付きで」
「あの宝石の件か?」
「他にも試薬とか城攻めの時のポーションとか、諸々ですよ」
「仕方ないな。いくらだよ?」
「利子込みで1億ディナとなりまぁす」
「フザけんな! さすがに吹っ掛け過ぎだろうが!」
「予め言ったじゃないですか、とんでもなく高価だって! 1ディナだって負けないとも約束しましたからね!」
「あぁ、うん。まぁアレだ。王様が立て替えてくれるだろ、報奨金も出るし」
委細はさておき、魔王討伐の旅は終わった。王都に戻れば莫大な報奨に加え、飲めや歌えやの大宴会が待っている。
しかし、この時のロボリクスは知る由もない。彼は近々、逃亡生活を強いられる事になる。9500万ディナの証文を片手に持つ、借金取りから逃れる為に。
ー完ー
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