勇者様がまたタル蹴ってる

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 実際、報復に出た。ロボリクス達は速やかにシースの街へと赴き、問題の店まで最短距離で駆けつけた。 「勇者一行だオラァ! 覚悟しろゴウツク爺!」 「ヒッ! 何かご用かね!?」 「ご用じゃねぇよこの野郎! 海の宝珠は偽物だったぞ、よくも騙しやがったな!」 「何の話かと思えば、そりゃあそうだろう。お前さんは世界に2つとない品が、50ディナぽっちで買えるとでも思ったのかい?」 「えっ、いや。でも商品名に『海の宝珠』って……」 「レプリカである事は、考えたら分かるだろう。もう少し洞察力を身に着けなされ。もし本物だとしたら、1億ディナでも足りないくらいだ」  完膚なきまでに言い負かされたロボリクス達は、すごすごと退散した。そして裏路地の階段で座り込む。  時折、物乞いが金をせびりに来たのだが、相手にするだけの気力が湧かない。 「どうすんだマジで。八方塞がりだぞ」 「勇者さん。いっそ聖剣に頼らないで魔王を倒すってのは?」 「それは無理だって。魔王に太刀打ちできない。仮に倒せたとしても、その後が問題なんだよ。封印が出来ないからな」 「そうなんですか、サーラ?」 「勇者様の話は事実。魔王を封じるには強力無比なマナが必要。その条件を満たす武具は、聖剣以外に存在しない」 「そっかぁ。サーラが言うんじゃ間違いないだろうね」 「それはどういう意味だ」 「いやいやアハハ。ともかく、海の宝珠を探さなきゃならないんですけど……」  サトゥルは言い淀んだ。彼も、その道が険しい事を重々承知しているからだ。 「どこにあるのか、サッパリ分からないんですよねぇ……」 「ヒントは大海原の浅瀬で、なおかつ朝日がスフィッと差し込む場所。碑文にはそう書いてあったな」 「曖昧過ぎませんか。どうしてご先祖様は、謎解きだとか、ボヤッとした記述を残すんですか。街から何歩進んだ所、とか書いてくれた方がよっぽどマシですよ」 「文句言っても始まらないだろ。こうなったら交易船じゃなくて、自由に航海して探さなきゃな。だから船を買い取る必要があるぞ。いったい何ディナ必要かは知らんが……」 「あの、一応言っておきますけど、僕はお金を出しませんから! 共有の財布から出しましょ、ね? ね?!」 「金の心配より世界の心配をしろよ。早く魔王を倒さないと破滅なんだぞ、破滅!」  ロボリクス達が言い争う間、サーラはまたもや違うものを視ていた。それは道端に転がるタルで、今にも朽ち果てそうである。 「遊んでんなよサーラ。お前も少しは参加しろ」 「遊びじゃない。解決法を探ってる」 「壊れかけのタルに何の意味が」 「とりゃ〜〜」 「おい、何で壊した!?」  辺りに金具や木片が散らばった。サーラはその場で座り込み、足元の残骸に触れた。 「やっぱり。答えはココにあった」 「サーラ、分かるように言えっての」 「海の宝珠は、水属性の力を圧縮して結晶化させたもの。つまり、水属性のアイテムさえあれば生成可能」 「えっ、マジで?」 「そして、このホコリ。タルの中で湿ってた。つまりは水属性を孕むものだと言える」 「それは、つまり……」 「見つからないなら作ろう、と言うお話」 「おいおい、聞いたかサトゥル!?」 「もちろんですよ勇者さん! これでバカみたいにウロつかずに済みますね!」  小躍りするロボリクスとサトゥル。だが、無邪気に喜べるのはここまでだった。 「浮かれないで。たくさん素材を集めなきゃいけない。ここからが大変」 「そりゃそうか。具体的に何をすれば?」 「今みたいに湿ったホコリを集めて。一定量貯まったら、私が作ってあげる」 「一定量ってどれくらいだ? まさか、革袋を満杯にとか言わないよな?」 「そんな訳ない」 「だよなぁ。そんなに集めるのは流石に一苦労だ」 「小山を成すくらい。恐らく、家一軒を埋め尽くしてしまえる程度には必要」 「ハァ……?」  ロボリクスは、冗談が下手だなという顔をした。対する返答は、無表情な否定である。 「とにかく集めて。口よりも手を動かす。さもなくば魔王討伐なんて不可能」 「わ、分かったよ! やれば良いんだろ!?」
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