廃遊園地へ

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 整備された道を長々と歩いた後、導かれるままに獣道へ。羽虫が顔を掠める度に、少し後悔がよぎったが、足元は案外平坦で、順調に歩みを進めることができる。木々の間を縫うように進むと、突如視界が開け、私たちはついに目的の場所へとたどり着いたことを知った。  踏み入ったのは、広く平らな場所で、かつて整備されていた名残がある。向こう側に、何か構造物が見えたので、私たちは一斉にライトで照らし出した。  見れば、それは横長の、異国の城を模した薄い建物で、すぐに古びた遊園地のゲートであることが分かる。「和田原メルヘンパーク」と、褪せて薄くなった文字で書かれていた。  ──なるほど、此処が遊園地の入り口らしい。  私はゲートを前にすると、物々しさに固唾を飲み、立ちすくむ。他の3人も同様だったが、やがて暁良が口を開いた。 「……入ろう」  そして私たちは、ゲート中央に開いた空洞の中へと、足を踏み入れた。  中に入ると、此処は山林の中に隠された別世界だ──そう思える程に、広大な空間が広がってた。暗がりで果ては見えないが、その広さがとてつもないことは、肌で感じ取れる。  目を凝らすと、あちらこちらに巨大な影が点在していた。それらがアトラクションの残骸であることは分かりつつも、石化した怪物のように見えて、恐ろしかった。 「何処から見よう」  涼太が言った。小声だが、興奮で息が弾んでいるのが分かる。  その時だった── 「──おい!」  しわがれた怒号が、背後から響いた。振り返ると、次第に近づいてくる懐中電灯らしき光源、そして人影。
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