誘い

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「時間、どうする?」 「夜だろ」 「でも、あんまり遅いと危なくない?最近は荒らすような人も来てるみたいだよ。ほら、見てこれなんか、本当に酷い」  そう言って、一つのSNS動画を再生し、二人に見せつける春香。私も画面に目を落とした。映っていたのは、高校生くらいの少年たちだ。ゲラゲラと笑いながら、スプレー缶で廃墟の壁に落書きをしていた。 「うわ、酷い」 「ね、最低」  自分たちのことは棚に上げて、批判する春香たち。  動画内で突如、『おい!!』としゃがれた怒声が飛ぶ。誰か地域住民のものだろうか。逃亡する少年たち。前を疾走する背中、画面に映る景色が、激しく揺れている。やがて動画は終わろうとする──しかし、その瞬間、映り込んだものに、目を見張る。 「……幽霊」 不意に、その言葉が私の口から漏れ出ていた。
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