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廃遊園地へ
春香たちが企てた廃墟探訪の決行日、私は結局、彼らの車に同乗していた。
「ユキが心変わりしてくれて、ほんと良かったー」
真横で春香が、無邪気にそう言い放つ。
「意外だね。どうかしたの?」
前方から、涼太が問いかけた。その隣では暁良が慣れた様子で運転している。
「……いや、別に、なんとなく。私にだって、悪戯心くらいあるし」
少し考えた後、私は答えた。そう──悪戯心だ。或いは、低俗な好奇心。ろくでもない衝動には違いなかった。
「それにしても、真っ暗」
春香の声につられて窓の外を見ると、辺りは濃い闇に包まれていた。すでに夜が深いのもあるが、街から離れており、人工の灯りが乏しいからだろう。大きな満月が、闇に際立って明るく、まるで作り物のように綺麗だった。
「やっぱり、危なくないかな」
ここに来て春香は、少し不安げな様子だ。
「そうだな。まぁ、4人居るし、男も2人居るんだから大丈夫だろ。な、涼太」
「まあね。幽霊相手じゃ分からないけど」
「もうっ」
春香は肩をすくめる。
「何にせよ、はぐれないようにだけ気をつけましょうね」
私はそう念を押した。
「此処に停めるしかなさそうだな」
小さなパーキングに着くと、私たちはそれぞれ懐中電灯と手荷物を携え、車を降りた。
「しばらく山道だけど、大丈夫か」
山裾にある廃墟なので、仕方のないことだった。同意して歩みを進める。
迷うのではないかと心配されたが、涼太のスマホだけは電波が届いていたので、地図機能によって、進むべき方向が分かった。
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