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誘い
『和田原メルヘンパーク』──その場所の名を久しぶりに耳にしたのは、ある夏の日の昼過ぎのことだった。学生食堂にて、友人らと雑談に講じていると、その中の一人である春香が唐突に切り出した。
「ね、これどう思う?」
春香は、スマホの画面上の一枚の写真を指差している。ある配信者が撮影した写真で、心霊写真ではないかと話題になっていたそうだ。見ると確かに、配信者であろう男性の背後、樹木の枝の部分に人の顔らしき影が写り込んでいる。とはいうものの──
「いうほどかな」
横から涼太が、私の感想を代弁した。
「──あるだろ、なんか錯覚の話。人の脳は、人の顔を見ようとするようにできてるんだ。見ようとするから、そう見えるってやつ」
横から涼太に「流石は優等生」と茶々を入れたのは、彼の親友である暁良だ。
「ね、ユキはどう思う?」
「私?……あの写真、不気味だと思った」
私がそう答えると、春香は饒舌にあの写真が撮られた場所の解説を始める。
「"出る"って評判だよ、ここ。噂によるとね、昔、その地には刑場が──」
つまり何やら、いわくつき。その場所こそが、通称『和田原メルヘンパーク』。15年前に閉園した同名の遊園地跡だ。
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