秋の音色

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 私もそれに乗って、フルートパートを歌い始めると、さらに気分がよくなって、とても楽しいって思えたんだ。 そっか。演奏を楽しみつつ奏でる覚悟を持つ。そういうことか。今までの私は、怯えてばかりいたね。  翌日の部活でのこと。 ミヤタがまた意地悪そうにニヤリと笑っても、それが何か?といった感じで、動じることなく音楽に熱中していた。  昨日、妖精さんとあれだけソルフェージュしたお陰か、指揮を集中して見ることができた。  その時に、私、楽譜をほとんど暗譜していたことに気づいたんだ。 それに譜面台の上の楽譜は、間違えたらどうしようっていう、私の心理状態の保険みたいなものだって事に気づいたら、なんでもないことのように、楽譜に頼らずに演奏できた。 そしたら、なんだか合奏練習がとても楽しくなったんだ。  そして、部活の終わりに、私たちは初めてミヤタのちゃんとした笑顔を見た。 その笑顔を見た部員たちが、私たちの周りに集まってきて、 「なに? どう言うこと?」 「なにやったの?」 「一日でこんなに音が変わるものなの?凄いじゃん!」  等々、私自身はあまり自覚していなかったのだけど、ひょっとしたら妖精さんと会えたことによって、一皮むけたのかもね。 「秘密教えてよ~」 そう、リエ先輩が言ってくれたから、私たちはついつい、誰も信じないだろと思いつつも、昨日の事を言ったんだ。 そしたら、 「え? それマジなの? 私も会いたい!!」 と目をキラキラさせて、熱烈なトーンで返事があった。
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