秋の音色

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 そんな癖のある、ちょっと厄介な先生なのだけど、音楽的センスは抜群だ。 それに、ミヤタの風貌は遠目に見ると、そこそこ男前だ。 ただ、着崩したスーツから見える、赤と青チェックのネクタイの趣味はいまいちだけれども。  ミヤタは、オータムコンサートに向けて、とてもピリピリしている。  先のコンクールでは、私たちは銀賞だった。良くも悪くもなく、まぁそこそこの結果だとは思うけど、いろんな制限があった中でも、真剣に音楽に向き合っていたのだから、多少なりとも残念な気持ちはあった。  ここにいる、吹奏楽メンバーの多くがそう思っているだろう。 ただ、その結果に一番納得していなかったのは、他でもない顧問のミヤタだ。  だからこそ、構内を開放して、地域の交流を兼ねた文化祭で行う予定のオータムコンサートには、特別な意気込みを持っているようだ。  お祭りなんだから、楽しめばいいのに。 なんて事を内心思っているけど、それを微塵も悟られないように、私は顔をミヤタの方に向けて、視線を反らすようにやや下を向いていた。  
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