秋の音色

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 それに、先輩方が卒業すれば、今度は私の学年がこの部を引っ張っていくことになる。 つまり、明日は我が身なのだ。  とにかく、こんなにナメられたままというのは、とても癪だ。リエ先輩の昨日の大粒の涙に報いるためにも、何か手はないだろうか。  何よりも、音楽性は高いのかもしれないけど、性格が捻れまくっているミヤタの鼻を折ってやりたい。 「お疲れさま~。 レコ、一緒に帰ろ~」 そう言ったのは、ファゴット担当のカヨだった。 「あー。 うん。 帰ろっか~」  カヨは、高校から楽器を初めたから、入学した当初は、中学から楽器をしている仲間とはなかなか仲良くなれなかった。  しかも、私たちが入学した去年の春は、コロナ自粛真っ只中だったから、全体で集まって合奏練習できるのはメインメンバーのみで、あとは自宅待機だったから、カヨは、ほとんど幽霊部員的な扱いだった。 そんなこともあって、孤独を感じてたんだ。  私はというと、メインメンバーに選ばれてはいたけど、隣との距離はかなり開けられ、アクリル板を設置された状態だ。演奏時は、中に楽器を突っ込んでやるタイプの特殊なマスクをしていた。  それでも演奏できるだけ良かったのかもしれないけど、マスクで息苦しいし、アクリル板のお陰で音は変に反響するし、それに圧倒的にメンバーが足りないから、音の厚みが薄い。
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