20人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「どう?おいしいでしょ」
「上手い!」
「疲れの取れやすくなる薬草にしたわ」
「へー」
「あとは睡眠が大事。何があったのかわからないけど、帰ったらよく寝てね」
薬草茶をすすって気持ちが落ち着いたのか、ラオハルトはゆっくりと話し始める。
「俺ってさあ、童顔なの」
急な話の展開で、思わずくすくすっと笑ってしまう。
「そうなの?」
「そうなの。フィーノは何歳に見える?」
「私より少し上っぽい感じがするから、二十二歳とか三歳とか?」
「だいたい合ってる。俺はそれよりさらに上。二十代後半なんだぜ」
驚いて飲んでいた薬草茶のカップを落としそうになる。完全に年下だと思い込んでいた。
「嘘!」
「ほんと。エナより俺の方が行き遅れなわけ」
「うふふ、よかった。何かうれしい」
「うれしかねーよ。だから最近周りから、結婚しろ結婚しろ結婚しろって呪文みたいな言葉しか聞こえない」
「それでお疲れなのね」
ラオハルトは力なく笑う。
「そういうこと」
「オーケー、わかったわ。行き遅れ同士、このまま行き遅れが続いたら、私たち二人で手を打つのはどう?ある意味の政略結婚ね」
私はにっこりと微笑む。たまにはこういう冗談も悪くないと思う。
「マジ?俺でいいの?」
「狩人の妻って憧れだったの。ずっと森の中で自給自足の生活ができるでしょう。楽しそうじゃない?」
「いいね。俺がイノシシを取ってくるわけだ」
「たまには魚も食べたいわね」
「魚釣りも得意だぜ」
「すごい!楽しみだわ」
私たちはその夜、そんな夢物語みたいな話ばかりして笑い合った。こんなに楽しい夜は久しぶりだった。時間を忘れて話していたせいで、外が明るみ出すまで気がつかず、二人して外を見て慌てて立ち上がってまた笑った。
「じゃあ帰る。またな」
ラオハルトの顔色はだいぶよくなっていたので、ほっとしながら手を振って送り出した。
最初のコメントを投稿しよう!