婚約破棄されましたが、夜のお散歩できるようになったので最高です

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 手紙の内容はこうだった。  リリス様が聖女の仕事――国に防御壁を張ったり、怪我や病気の人たちに治癒を施したりなど――で忙しいため、妃の仕事を学ぶ時間がない。今後もその状況は変わらないだろうから、私に王宮に戻って妃の仕事を代わりに行ってほしい。もちろん高額な報酬も与える、と書かれていた。  これも何となく予想していたことだった。第一王子以外にも王子はまだたくさんいて、教育を受けている妃候補もたくさんいる。しかし、私が一番長く妃教育を受けていたし、元婚約者の立場だ。 「これは困ったわね」 「何て書かれてあったんだ?」  ラオハルトが尋ねる。 「リリス様の聖女のお仕事が忙しすぎて妃教育を受けられないため、私に王宮に戻って代わりに仕事をしてほしいとのことです」 「はぁ?」 「報酬は弾むそうです」  私はこの一瞬の間だけでも、ものすごく悩んだ。家のことを考えると、高給は大変ありがたいことだった。まだ小さい弟妹たちもいる。 「パシオン、お返事はそのうち書くけれどもうしばらく考えるわ。王宮からの使者が来たらそのように伝えてくれる?」 「承知いたしました……ところでお嬢様」  ちらっと、目を向けた方向にはフィーノ様とラオハルトがいた。 「このお二方は……」  二人を見て、パシオンは何か考えているようだった。 「隣国のお友達よ。イノシシに襲われそうなところを助けていただいたの。それ以来よく遊びに来てくれるのよ」 「そうでございますか。どうかエマお嬢様をよろしくお願いいたします」  パシオンは去り際も二人をじっと見つめていた。私が友達だと言っているのにこのような反応、彼にしては珍しいことだった。
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