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怠け者の警備員
「すみません、駅の方にはどうすれば行けますか?」
身長が高く、体格も良いのに妙に腰の低い男が、窓口にいた桐谷に尋ねた。
大きな声ではなかったが、一言一句までハッキリと聴き取れた。
「んぅ?あぁ、えぇー、駅の方に行くには、、、」
不意を突かれた桐谷は、目元まで被っていた警備防を頭の方に押し上げつつ、半分寝ぼけ気味に口と頭を動かし始めた。
しかし、その言葉は突き付けられた2つの銃口にすぐさま遮られた。
〜1時間ほど前〜
桐谷はいつも通り警備室でうたた寝していた。
雑居ビルに入っている小さな会社の深夜の警備だが、特段業務があるわけでもなく、今までにも警備が必要な何かが起こったこともない。
正直、必要性の疑われる仕事だった。
警備室に灯りが点いていて、常に人がいる。
それ自体がこの仕事の存在意義なのだろう。
そして桐谷はその仕事が気に入っていた。
今まで色々な仕事を転々として来たが、この仕事だけは2年も続いている。
退勤時に書くはずの報告書にも、いつも通り、"特になし"とだけ既に書いて用意してある。おかしな話だが、本日の業務作業はこれにて終了済みだ。
深夜の1時半を回った頃、防犯カメラに2つの人影が映った。
この時間に寂れたこのビルの前を通る人は多くはないが、居たとしても特に気に留める程でもない。
桐谷は気付いていないどころか、防犯カメラを見てすらいない。
そして、2人の男に銃口を突き付けられるという困った状況になったというわけだ。
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