ゴリラとダルマ

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ゴリラとダルマ

 身長が高く、体格も良い方の男はゴリラみたいだな、と桐谷は思った。  そしてもう片方の男は身長は高くないが、同じく体格は良くダルマみたいだな、と桐谷は思った。  2人とも横に広いが太っている訳でなく、筋肉質だ。どちらも年齢は30前後と言ったところだろうか。  早々に椅子に縛り付けられて、頭部に銃口を突き付けられながらこれはピンチかと考えていた。  2人の男は既に警備室に押し入っている。テレビCMで見る様な警棒を持った精鋭警備会社の警備員などと違って、桐谷は護身術の類いが得意なんてこともないし、2人相手にしかも銃まで持たれたのでは無す術無しだ。  出来る事がないのでとりあえず要求を聞こうと思った。 「金庫の暗証番号を教えろ」 ゴリラの方がそう言った。 さもなくば頭を撃ち抜くぞという感じだ。  頭を撃ち抜かれるのは困る。 ところでこの銃は本物だろうか?と桐谷は思った。拳銃には詳しくないし、本物を見たことも無い。側頭部に感じる硬い感触だけで本物かどうか判別するのは桐谷には不可能だったので、それについては諦めた。  金庫の暗証番号は知っているのだが、答えは一旦保留にしておこうと桐谷は考えた。場合によっては知らないと答えた方が良いかもしれない。  ダルマの方が桐谷の頭に銃口をグリグリと押し付ける。 「兄貴、痛めつけてさっさと吐かせてしまいましょう」 なにやら物騒な事を言いだした。 「そうカッカするな」 ゴリラがダルマを嗜める。 「兄さん、金庫の暗証番号を知っているな?驚かせて済まないが、俺たちは金が手に入ればそれで良い」 「なるほどぉ」  ゴリラの方からは品とも取れる様な知性を感じるが、ダルマからはあまり知性を感じなかった。 「このまま黙っていたり、抵抗する様ならコイツの言う通りになる」  桐谷が返答を遅らせていることに若干苛立っているのか、ゴリラが催促する。 「えぇすみません、多少寝ぼけていたのもあって、私の脳みそがパニックかもしれません」  痛めつけられるのはもちろん御免だ。桐谷はゴリラとの会話を進めながら状況を整理する事にした。
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