ゴリラとダルマ

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 ゴリラの言葉から1つ分かったのは、暗証番号を教えるまでは桐谷が殺される事はどうやら無さそうだと言う事だった。  しかし、それは同時に暗証番号を教えたら殺される可能性があると言う事でもある。 「兄さんを痛めつけるのが目的じゃないが、あまりオレたちを怒らせない方がいい」  ゴリラはまだ本気で怒っている風では無いが、このままはぐらかし続けると怒るのも時間の問題かと思われた。 「仮に、仮にですよ?私が暗証番号を知っていたとして、教えたら無事で済む保証があるんです?」 「保証は無いな」 ゴリラの返答は冷徹だ。 希望的観測だが、できれば余計な殺傷をせずに金だけ持って逃げたいと言うのは本音だろう。その上で、脅す側の態度としては圧倒的に正しく、その短い言葉に隙は無い。 だけど、、 「あなたたち、何故覆面などを被って来なかったんです?私に顔を見られてしまった以上、金を盗った後で口封じに殺されるのが私としては恐怖ってもんです」 「アっ!たしかに」 ダルマの方は今更気付いたと言う感じだ。 「兄貴、どうするんです?」 ダルマが焦りだした。 「答えたら殺されるのなら黙っていた方が得ってもんじゃないです?あ、もちろん知ってたらの話ですよ」 「やっぱり痛めつけて無理矢理に聞くしか無いか」 ゴリラはあくまで強気だ。 だが、脅しだけですんなりと金を盗ってトンズラしたかったので、今の展開が多少不服という気配が桐谷には若干見えた。  ゴリラの方も口封じの事までは考えていなかった様だ。 金だけ盗ってそのまま逃げるつもりだったのなら、痛い思いもしないし桐谷としてはそれで良かった。 もしかしたら余計な墓穴を掘ったのかも知れない。
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