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そうかぁ、あたしは強盗犯に刺されて死んだのか。
あたしはそんな事を考えながら、ママンの胸元からむしり取ったネックレスをちゅぱちゅぱとしゃぶった。
え? なぜネックレスをしゃぶるのかって?
それは今のあたしが生まれたてホヤホヤの赤子だからさ!
前世の記憶があったのだとしても、赤子の本能には逆らえない。手に取った物は何でも口に入れたくなっちゃうお年頃なのさ。
ネックレスを舐めるかたわら、むっちむちの指先をぺろぺろと舐め回す。うん、何かしょっぱい。
「アリアンナは本当に宝石が好きなのね。積み木やお人形さんには目もくれず」
あたしの手の中から、ママンがダイヤモンドのネックレスを取り上げた。あたしは「あー、だー」などと不明瞭にうめきながら、キラキラのネックレスに手を伸ばす。
なるほど、今世のあたしの名前はアリアンナ。
ということはここはアメリカ? それともイタリア? ひょっとしてオーストラリア?
あたしは「ぶー、あぶー」と可愛らしくうなりながら、ママンの顔を見上げた。
まだ20代前半と見えるあたしのママンは、お人形さんのように美人だ。さらりと揺れるプラチナブロンドに、ぱっちりとしたローズピンクの瞳……ローズピンク?
まてまて。もしかしてあたしがバブゥッと生まれたこの世界は、俗にいう『異世界』ってやつ?
なるほど、つまりこれは異世界転生。合点。
「アリアンナ。お母さんはお部屋のお掃除をしてくるからね。少しだけ1人で遊んでいて」
涎まみれのネックレスをハンカチで拭いながら、ママンは行ってしまった。
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