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貧乏ゆすりとまではいかないが、忙しく足の指を動かしているのを見ると頭の中で何かをぐちゃぐちゃ考えていることが容易に伺える。
長い付き合いだ。
言葉を探して考えて言うことをまとめて、それでもためらって結局口にしない。
そんな彼の性格は他人よりは知っているつもりでいる。
「私、うまく笑えてた?」
いたずらに視線を窓の方にやるとまだ銀色の月が見えた。
自ら言葉を口にしないものの私が求めればこの人はぽつりぽつりと話し始める。
今答えを求めたなら、どんな回答をくれるのだろうか。
結局電気はつけないらしかった。
文句を言いながらも今の私に精一杯寄り添おうとしてくれるのがヤツらしい。
アキの結婚式。
妻になった冬子さんの希望で挙げられたハワイでのリゾートウェディング。
今日は晴れて天候にも恵まれた。
かわいいらしいチャペルでの披露宴は終始和やかな雰囲気で行われて二人ともそれは幸せそうだった。
「そりゃもう完璧に」
「良かった」
「得意だろ、仮面かぶるの」
「やなこと言うわね」
婚約者に振られた可哀想な女、
一部の人からはそんな目で見られたけれどどうしようもなかった。
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