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行かないなんて選択肢はなかったし、第一そんなつまらないことでアキの晴れの日を見逃したくなくて。
私とヤツが一番祝福しないといけないことは自分が一番わかっていた。
つまらない人には作り笑顔を浮かべたが、その他は本心から出たもの。
間違えなく嬉しかった。
「なんでだろうね、お部屋戻ってきたら途端に動けなくなっちゃった」
「気ぃ張ってたんだろ」
「そうかな」
「そうだろ」
ごろん
ソファから一旦体を離してヤツの膝の上に転がり込む。
今日の彼は優しい。
それが分かっているからワガママになる。
でも瞳に映るのは欲情。
わかりやすすぎるけれど。
「バルコニーにもソファがあるの」
これはお約束だから、
「連れてって。」
口にはしないのだ。
抱き上げて欲しくて腕を広げれば驚いたように大きくなる瞳。
それもそのはず。
私がこうするときは決まって彼じゃなくて兄の方にねだったから。
チッ
「兄貴がいなくなったと思えばこれかよ」
「気に入らない?」
「気に入るわけない」
聞こえてくる低い舌打ちに勝気に笑えば下から見える顔が苦い表情に変わる。
悪いことをしている自覚はある。
あの人の代わりをヤツに求めている。
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