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黒曜石みたいに黒い瞳の鋭さがだんだん緩んでいってゆらりと煌めく。
彼の感性は好きだ。
不器用で汚れていなくてまっすぐ。
彼はそんな自分が嫌いで器用なふりをするけれど…
「なんだよ。」
「…いや」
「は?」
ふふ
我慢できずにちょっとだけ唇を上げる。
「大丈夫か」
「どうだろ」
「ついにイカれたか」
「……真顔で言ってんじゃないわよ」
変が奇妙なものでも見るような目をされるけれど言い返しはしない。
これも彼に言わないのはお約束だから。
はぁ
息をついて膝を抱えて縮こまる。
ソファに二人。
ちらりと視線を向ければさっきとは違う、付かず離れずの微妙な距離が空いていて。
「……」
不自然にならないように視線を戻してから遠くの方に目を向ける。
私がこの距離を詰めることがあっても、ヤツが近寄ってくることはほとんどない。
横にいても、隣りを歩いていても彼はお行儀良く適度な距離感を保つ。
まぁ、
大体これまでヤツと二人きりになることの方が珍しかったのだけれど、
「あぁあ」
私たちの間にいた人をまた思い出すではないか。
アキ
小さく口の中でつぶやいて膝を抱え直す。
「触んないで」
「はいはい」
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