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そうすればまた撫でられる髪
私が何を言ったって無駄。
雑にぐしゃぐしゃとかき回されて、乱される。
慰めてるんだか貶してるんだか、もっとわかりやすくしてほしい。
隣りを睨めば、腹の立つくらい涼しげな瞳がこちらを飄々と見つめているだけ。
っち
「おぉ怖えー」
さっき二度も舌打ちしたのはどこのどいつだ。
「うるさいわよ」
「失礼なやつ」
離れようとすればわしゃわしゃと犬でも撫でるようにされて肩を抱かれた。
仲裁役がいないここは騒ぎが起きても解決しない。
ただやり合うだけ。
でも肩に回った腕をグッと引き寄せられて思考が止まる。
「……!」
とん
その力に逆らえずに頭が辿り着く先はさっきのポジション。
彼の膝の上。
驚きを隠すのを忘れて上を見上げれば、何か見たことのない色を湛えた瞳があった。
サラリ
ためらいなく触れられるのは手入れを決して怠らない、自慢のロング。
固まっている私を完全に無視して、男はその感触を楽しんでいるようだった。
付かず離れずの微妙な距離。
お行儀良い犬。
「……アキがいないからって」
化けの皮はもう少しゆっくり剥がしてくれ。
唇を噛み締めて言葉を搾り出す。
気に入らない。
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