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映るのは私を試すような、気色の悪い色。
「あぁ、今日もうここに誰か来ることはねぇな」
核心はつかない。
事実を確認するだけに留める。
根は不器用。
だけれどヤツは狡猾さを習得した。
端正な顔に滲む欲情。
はぁ
さっきの色気のない雰囲気はどこへやら。
私は粗大ゴミで十分だ。
「呆れた」
ばしっ
「って!」
好きにはさせない。
腕を思いきり投げ出してお腹に食いこませれば必要以上に大きな声が上がった。
「ったいな」
「そっちこそ触んないでって何度も」
「なんでナツは勝手にベタベタ触るくせに俺はだめとか意味ふめー」
「ルールは私。口答えしない」
「……女王様は今日もご健在で」
ふん
「わぁ、拗ねたよめんど」
「ネイルで引っ掻くわよ、顔」
彼の体のある方とは反対側に寝返りを打つ。
おぉだかあぁだか悲鳴が聞こえたけれど徹底的に知らないふりをした。
「……」
また目に入ってくるのは素敵なオーシャンビュー。
気がつけば少し前まで下から聞こえていた騒ぎ声はしなくなっていて、今はただ重い静けさが空間に押し寄せていた。
あぁあ
沈黙を守っていると背後でする呆れたようなため息。
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