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はぁ
何度目かのため息。
息を吐けば自分に嫌気がさしてきた。
静かな夜。
首を横に回せば目に映るのは少しだけ欠けた銀色の月。
銀色の光を反射してその下の水面はキラキラ光る。
完璧なオーシャンビュー。
でも私がその景色に心を動かされることはない。
目の前にはおしゃれなガラステーブルがあるけれどパーティなんてする気になるわけなくて。
第一、一緒にいてくれる人もお祝い事もない。
だからここ1時間ほどずっとこのバルコニーの大きなソファに転がっているだけ。
目を閉じて耳を澄ませば下の階から幾つも聞こえてくる楽しそうな声。
それがさっきから私の心の中で燻っているものをもっと重たく、大きくする。
飛行機に何時間も乗って来たリゾート地。
時差ぼけもあるし、結婚式に参列したから程よく疲れていた。
だけれど眠れない。
理由なんてない。
ピンポーン
「……」
いつもなら綺麗だと思える景色を喜べないでいれば鳴る呼び鈴。
それはここ数十分言葉を発することなくいた私の耳にはひどく大きな音で
煩わしい。
ゴロン
もう深夜近い。
寝返りを打ってクッションを耳に押し当てる。
こんな時間に誰だ。
ピンポーン
「……ん、」
うるさい
出る気なんてさらさらなくて無視したところでもう一度ベルは鳴った。
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