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もう一度ドア開ければ開け切る前に雑に押されて、Tシャツと短パンにスリッパを引っ掛けた男がズカズカと上がり込んでくる。
「わ、くれぇな。電気は?」
「付けなくていい。」
「るせぇよ、辛気臭ぇ顔しやがって」
私の方を振り返ろうともせずによく言う。
「広いなぁ、俺の部屋とは大違い。」
「代わってあげるわよ。ここに三泊なんて暇で死にそうよ。」
男の手には重そうなビニール袋がいくつか下がっていて、歩くたびにガサガサと音を立てていた。
「えーいいよ、兄貴が配慮したんだろ?」
「……」
「あ、今それ禁句だったわ」
野蛮人が悪さをしないようにと目を光らせていたけれど放たれた無慈悲な言葉に足取りは止まる。
それに気がついたのだろう。
ようやく振り返った男が小さく呟いてからソファの上に袋を下ろしたのが見えた。
本当に、
デリカシーのカケラもない。
「誰かとオタノシミじゃなかったの?」
「ん?」
「女に囲まれてたじゃない、」
しょうがなくソファに足を向けると袋の中身を机の上に出し始めた彼が興味のなさそうな顔で首を傾げる。
結婚式の2次会。
容姿だけ良いこの男はモテにモテていた。
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