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「アキは、幸せかしら」
ボソリと呟けばぴたりと止まる手の動き。
「…?」
となりを向けば切れ長の瞳が動揺したように揺れていて。
ったく
「好きな女と結婚したんだ。幸せだろ。」
その後に小さな声は落とされた。
そうか、
テーブルに置かれてあるお菓子の袋を一個取る。
「開けて」
「はいはい」
隣りに渡すと返ってくるのは適当な返事。
いつもだったら夜だからと我慢して食べないけれど、今日は特別だ。
細身の体のくせに腕に付いた筋肉。
袋が開けられるのを見てから肩に頭を押し付けたままねだるように口を開ける。
薄暗い中で光を宿した瞳が見えた。
「ったく」
じっと見つめられた後に突っ込まれるお菓子。
「荒れてんなぁ」
「気のせいよ」
「だったらいいんだけど」
唇に指先が少しの間触れて、離れていく。
静かに口にあるものを咀嚼したけれど、甘いだけだった。
香りも、風味も食感も、なにも感じられなかった。
「……」
「もっといい顔して食ったら?」
「無理」
眉を寄せると頭にあった指が滑って行って軽く叩かれる肩。
はぁ
それから妙に深いため息が隣りでした。
顔を動かせば目に入るのは渋い顔。
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